関 係 者 各 位 去る3月11日、益子の登り窯、穴窯等、多くの窯が壊れ、私どもの唯一の登り窯もまた全壊しました。 その後すぐに、多くのボランティアの方に来ていただき、瓦礫の片付け、レンガを利用するための目地取り等、支援していただき本当に助かりました。それまで、当たり前のように登り窯で窯焼きをしていたことが夢のようにも思えました。こうして近隣(県内)の薪を燃やし、土をこねて作った器の一つ一つを焼くことは、どういうことなのだろうと考えました。当たり前のことが突然崩壊された体験を、今回は誰しもが体験しました。 これまで手にとることもなかったのですが、私どもの家にありました「窯から見たやきもの」という本を読み返し、「窯」というものが焼き物においてはどんなに重要なものかを改めて思い知らされました。 『“焼き物の真髄は窯焼きに尽き、窯焼きの真髄はしょせん焔をいかにして捉えるかというにつきます。どんな窯を築いて、どんな燃料を使うか人によって違いますが、その選択の如何に関わらず、窯焼きは焔の技術であります。”(加藤唐九郎氏の言葉) さすれば、焼き物の歴史は窯の歴史です。焔(窯)の洗礼があって初めて”やきもの”なのです。』(「窯から見たやきもの」より抜粋) 7月、登り窯づくりがようやく始まりました。作り手は窯作りの職人ではなく、昔、益子の登り窯全盛時代に何度も窯づくりを手伝っていた方で、その方と共に製作し、私たちが窯土の準備等をしました。 8月中旬ごろ、思ったよりも早く窯が完成しました。そして、作陶が始まり、9月に素焼きの窯焼きをすることができ、このたび10月10日に本焼きに至りました。 ボランティアの方々、また、益子焼復興支援センターの方々、物資両面で支援してくださった方々に心から御礼を申し上げます。 私達は、10月16日(日)より益子焼共販センター物産ギャラリーにて展示、その後、11月3日~7日に益子陶器市にいつもの場所(陶房ましやま敷地内)にて出店予定しています。また皆様にお目にかかれますことを楽しみにしております。 平成23年10月吉日 田中喜一工房 田中喜一・田中厚子
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